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金属材料基礎講座-220

液相のある偏晶組織の量的計算

 偏晶状態図の液相が多い組成における凝固、偏晶反応、析出過程を見ていきます。図1に偏晶反応状態図の模式図を示します。偏晶組成はW合金(A-50%B合金)です。はじめに全て液相Lの状態からL1+L2の領域になるため、一つの液相Lから2つの液相L1とL2に分離します。温度T1(偏晶温度直上)における液相L1とL2の量は、てこの原理によりL1はXW、L2はWT、分母はXTとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 温度T2ではL1から偏晶αとL2の偏晶反応が起きます。偏晶反応における偏晶α(α1)とL2(L2’)の量は、てこの原理により偏晶αはXT、L2はTS、分母はXSとなります。これにL1の量をそれぞれかけて計算します。これらを計算すると式(3)、(4)のようになります。そして、L2の総量(L2t)は式(2)の量と偏晶反応(4)の合計となります。これを式(5)に示します。

 偏晶反応の後は溶解度の減少もないので、そのまま温度が低下します。そして温度T3になるとL2から共晶αと共晶βの共晶反応が起こります。てこの原理により共晶α(α2)はVX、共晶β(β2)はXS、分母はVSとなります。ここにL2tの量をかけることで共晶α、共晶βが求められます。これらの計算式を式(6)、(7)に示します。

 温度がT3からT4に低下すると溶解度の減少に伴う析出が起こります。αからβの析出量はSを起点としたてこの原理となります。分子はSA、分母はBA、これにαの量をかけて析出βを計算します。βからα析出量はVを起点としたてこの原理となります。分子はBV、分母はBA、これにβの量をかけて析出αを計算します。αは偏晶α(α1)と共晶α(α2)からそれぞれβの析出が起こります。βは共晶β(β2)からαの析出が起こります。これらを計算すると式(8)~(13)のようになります。

 αの総量は偏晶α(α1’)と共晶α(α2’)と共晶βからの析出α(α4)です。βの総量は共晶β(β2’)と偏晶αからの析出β(β3)と共晶αからの析出β(β4)です。これらの計算を式(14)、(15)に示します。検算として、温度T4におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(16)~(19)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

 

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