EBSDで得られるデータ
EBSDで取得するデータは主に結晶方位情報です。これを元に様々なデータを表示できます。これを理解するには電子回折や結晶構造などの知識がある程度必要になります。その点はEDSなどの元素分析とは異なります。データ解析のためには試料の結晶構造などの情報が重要になります。
IQ(Image Quality)マップ
菊池パターンの鮮明さに影響します。明るい位置ほどパターンが鮮明になり、暗いほどパターンが不鮮明になります。パターンが不鮮明になる原因として、試料中の加工ひずみ、酸化膜、結晶粒界などがあります。
Boundary(結晶粒界)マップ
EBSDでは結晶方位が異なる境を結晶粒界とします。そして、結晶方位がどの程度の角度で異なっているのかも記録しています。さらに、どの程度の角度差があるときに結晶粒界として表示するかも設定できます。隣の結晶粒と角度差の小さい小傾角粒界と、角度差の大きい大傾角粒界を区別して表示することもできます。逆に、小傾角粒界と大傾角粒界をまとめて結晶粒界として表示することもできます。
IPF(Inverse Pole Figure:逆極点図)マップ
結晶粒が結晶の(100)、(111)など、どの面を向いているかを表示する方位マップです。三角形のカラーキーが表示され、それに対応した色が結晶粒に表示されます。完全にランダムな組織であれば、様々な結晶方位の色が表示されます。一方、特定の結晶方位(例えば(111))にそろっている時は(111)が多い組織になります。圧延集合組織などを観察すると特定の面が多くなりやすいです。
Phase(相)マップ
例えば、鉄鋼材料のフェライト組織(体心立方格子)と残留オーステナイト組織(面心立方格子)のように、近い組成でも結晶構造の異なる組織を区別する時に有効です。EDSでフェライトと残留オーステナイトは組成が近いのでほとんど区別できません。EBSDは結晶方位と結晶構造によってデータが形成されるので区別できます。結晶粒ごとに結晶構造を表示することができます。また、各結晶構造のIPFマップなども作成できます。これは元素分析を行うEDS、WDSとは対照的な機能です。
極点図
逆極点図は組織中の各結晶粒がどの方位を向いているかを表しますが、極点図は組織中の結晶方位をステレオ投影で表示します。
結晶粒度分布
結晶粒径のどのサイズが多いかをグラフで表示できます。一つの組織写真の平均結晶粒径ではなく、結晶粒径を各サイズにヒストグラムなどで表示します。結晶粒径の統計的データを扱うときなどに有効です。
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