格子定数と結晶構造
試料表面から得られた回折パターンのバンド幅が格子定数と関係しています。格子定数は金属ごとに異なる値を持ちますが、EBSDではバンド幅はほとんど考慮されず、結晶面の回折パターンや角度関係などを扱います。そのため、体心立方格子や面心立方格子などの結晶構造の情報はわかっても、格子定数、すなわち材料情報はわかりません。例えば鉄のEBSDマップを取得する時に、解析ソフトとしては「試料パターンと鉄のパターンを比較」しているわけではなく「試料パターンと体心立方格子パターンを比較」しています。
金属材料の結晶構造は主に体心立方格子、面心立方格子、稠密六方格子のどれかであることが多いですが、金属間化合物、酸化物、窒化物などは複雑な結晶構造となります。そしてEBSD測定の際はあらかじめ想定される材料の結晶方位情報を設定しなければいけません。例えば、マルテンサイト組織の残留オーステナイトを測定する時は、マルテンサイトとオーステナイトのデータを設定します。マルテンサイト組織の中のセメンタイトの分布を測定する時はマルテンサイトとセメンタイトのデータを設定します。なお、設定するデータが増えたり、酸化物などの複雑なデータを設定するほどEBSD測定に時間がかかります。
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