金属材料基礎講座-138

エッチング

 エッチングとは鏡面仕上げに研磨した試料を特定の溶液(エッチング液)に浸すことで、表面の結晶粒界や特定の相などを優先的に腐食させ、適度な凹凸をつけることです。組織中の結晶粒界や特定の相はエッチングにおいて溶解速度が異なります。母相がほとんど溶解されず光沢を保ち、結晶粒界だけが腐食されるほど鮮明な金属組織になります。試料を鏡面仕上げして、エッチングせずに光学顕微鏡観察すると、平坦で単一な状態しか観察されません。この時確認できるのは主に不純物介在物や欠陥などです。エッチングにより表面に凹凸ができると、光学顕微鏡観察では陰影ができ、それが金属組織として観察できます。

 エッチング液は材料ごとに様々に存在します。その濃度や浸漬時間などの条件は試行錯誤して決めていくことが求められます。また、焼入れした鋼ではマルテンサイト組織を観察する時と、旧オーステナイト粒界を観察する時では異なるエッチング液が使用されます。そのため、同じ材料でも観察する目的によってエッチングを使い分けます。エッチング液の多くは経験的に作り出されたものが多いです。実際にエッチングしてより鮮明な金属組織が得たい時などは、配合、時間、温度などを変え、別のエッチング液を試すことを行います。

 エッチング液の例として鉄鋼材料では硝酸とエタノールの通称ナイタル溶液(フェライト、パーライト、マルテンサイトなど)、ピクリン酸を使用したAGS溶液(ピクリン酸水溶液+界面活性剤、旧オーステナイト粒界など)があります。アルミニウム合金はフッ酸、水酸化ナトリウムなどを使用します。銅合金は塩化第二鉄と塩酸のグラード試薬などを使用します。マグネシウムは硝酸、リン酸、ピクリン酸、エタノールなどを組み合わせて使用します。

 

(前の記事)                               (次の記事)