金属材料基礎講座-137

研磨・琢磨のトラブル

 研磨・琢磨作業におけるトラブルの多くはキズに関することだが、他にも試料端のダレ、研磨材のめり込み、コメットテイルなどがあります。研磨・琢磨における目的は、適切な研磨キズを試料全体につけていき、最終的に鏡面仕上げすることです。この時に特に大きく深いキズが観察される時は、汚れやゴミまたは前の研磨カスが残っていることが考えられます。これはバフ研磨で特に問題になりやすいです。

 大きなキズの対策としては、まず試料とバフ布を洗浄します。小さな汚れやゴミでも、研磨盤が回転する度に試料を傷つけてしまうからです。次に、バフ布の劣化を確認します。バフ布には様々な種類がありますが、いずれも消耗品です。使用すればするほど、バフ布の繊維などが乱れ、破れていきます。これが試料を大きく傷つける原因となります。

 試料端のダレとは試料の端が丸く研磨されることです。これは研磨時の方向と試料にかかる応力分布が不均一になると顕著になります。また、傾向としてバフ布が軟らかくなるほど、研磨時間が長くなるほど試料の端がダレやすくなります。ダレ防止には研磨の方向を考慮して研磨を行うこと、硬い樹脂を使用すること、試料断面に硬い材料を挟んで埋込むことなどが有効です。

 研磨材のめり込みはダイアモンド粒子などの硬い研磨材が試料表面にめり込むことです。研磨材のめり込みを試料に元々存在する不純物介在物と見間違うこともあります。しかし、研磨材がめり込む時はめり込んでいるものの数が多いので、それを意識すると気づきやすくなります。研磨材のめり込みが起きる時は荷重、回転速度、研磨材、バフ布の相性などの研磨条件が適切ではないことが多いです。

 コメットテイルは一方向に研磨することによって試料中の硬い相や粒子が尾を引いたように見える状態です。硬さの異なる相や粒子が一方向に研磨され、その段差が一方向に伸びることによって生じます。コメットテイルは一方向で長時間研磨するのではなく、研磨の方向を随時変えて研磨することで防ぐことができます。

 

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