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金属材料基礎講座-34

溶接断面組織

 溶融溶接を行うと材料は溶解・凝固過程を経た溶接部、その周辺の溶接による熱で組織や機械的性質に変化を生じた熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)、そこから離れた溶接の影響を受けていない元材部(母材部)に大きく分けることができます。その様子を図1に示します。

 溶融部は溶接中心部に向かって柱状晶が成長する組織になります。しかし、この柱状晶組織は溶接の入熱量によって変化します。入熱量が少なくなるほど柱状晶から細かい等軸晶の組織になります。

 溶融部と熱影響部の境目は入熱の影響によって結晶粒が粗大になりやすい箇所です。結晶粒の粗大化は靭性の低下につながります。熱影響部は冶金的に熱処理をしたように組織が変化します。すなわち、オーステナイトからパーライトやベイナイトの析出が起こります。溶接の入熱が大きくなるほど、高温で保持されるため、結晶粒の粗大化が起こりやすくなります。結晶粒粗大化を防止するためには溶接の入熱を上げ過ぎないことや、Ti化合物などの微細化材を添加することなどが有効です。

 

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