合金状態図-2 共晶・包晶・偏晶反応
全率固溶型以外の状態図のタイプとして共晶反応型、包晶反応型、偏晶反応型の3種類があります。これらの典型的な状態図を図1に示します。これらの状態図は実用合金において頻繁に見られます。そのため、合金設計をする時にとても重要になります。
1つ目は共晶反応です。状態図では、2つの液相線が下がり、横方向の直線と交わります。この交点を共晶組織、共晶点、共晶組成などと呼びます。そして、この時の温度を共晶温度と呼びます。共晶反応では1つの液相から2種類の固溶体が共晶反応組織として晶出します。この反応式を下に示します。
L⇌α+β
なお、共晶組成以外の組成だけれども、共晶反応の直線を通過する時は、あらかじめ初晶としてαあるいはβが存在しています。そして、共晶温度において、残った液相が共晶反応を起こします。共晶反応のあとは、α相、β相それぞれ溶解度の変化に伴って、濃度が変わり、微細な析出を起こしながら室温まで冷却されます。
2つ目は包晶反応です。状態図では包晶反応の直線の上側は1つの液相線ですが、下側に固相線と液相線が現れます。これはあらかじめ晶出した初晶αと液相が反応して、新しいβ相が晶出します。この時、β相がα相を包み込むように成長するので包晶反応と呼ばれています。この反応式を下に示します。
L+α⇌β
包晶組成においてはβ単相組織となります。包晶反応において、固相が多い時はα相が残り、液相が多い時はLが残ります。これらは温度が下がると溶解度を変えながら、濃度変化や析出を起こして室温まで冷却します。
3つ目は偏晶反応です。これはAlやPbなどのように合金の密度差が大きい時などに現れる状態図です。温度が高い時は液相のL単相ですが、温度が低下すると液相でもL1とL2という2相に分かれます。偏晶反応ではこのうち、片方の液相L1からもう片方の液相L2とα相の晶出が起こります。このL2もさらに温度が低下すると、L2からα相とβ相に共晶反応のような反応が起こります。これらの反応式を下に示します。
L1⇌L2+α L2⇌α+β
偏晶反応の後は、これまでと同様に溶解度の変化に伴って濃度変化や析出が起きますが、偏晶反応型の状態図は固溶限が限りなくゼロに近いものが多いため、室温になるとほとんど、もとのA金属とB金属になってしまうこともあります。
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