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金属材料基礎講座-5

すべり系と最密充填構造

すべり面というのは金属原子が移動する面のため出来る限り動きやすい面であることが好ましいです。金属原子を球体と考えた場合、各結晶構造で金属原子が最も密に詰まった面がすべり面となります。図1に各結晶構造のすべり面を示します。体心立方格子には最密充填面はありませんが、そのなかでも最も金属原子が密接な面がすべり面になります。面心立方格子と稠密六方格子は最密原子面がすべり面になります。そしてすべり方向も同様に最密原子面に沿っています。

 図2に各すべり面におけるすべり方向を矢印で示します。面心立方格子と稠密六方格子のすべり方向は同じになります。面心立方格子はこの平面だけでなく、紙面の斜め上または斜め下方向にも同様に最密充填構図が存在するために色々な方向にすべりが起きます。そのため、面心立方格子の金属は加工性がよいのです。反対に稠密六方格子はこの紙面上のすべりのみで、面心立方格子のように上下方向にはほとんどありません。そのため、すべりが起きずらく加工性が悪いのです。体心立方格子も結晶構造の斜め方向にすべり系があるため加工性はあります。しかしすべり面が最密充填構造ではないため、すべりを起こす応力が面心立方格子よりも大きくなります。そのため、鉄のように硬く強い材料となるのです。しかし、ひとたび塑性加工が起きると伸びはあります。

 

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